自社ツール紹介 / 日報入力ツール
15分単位で「これからやる作業」を先に記録する、自作の日報システムです。
一日が終わる頃には、日報はもう出来上がっています。
課題
終業時にまとめて書こうとすると、午前中に何をしていたかはもう記憶が曖昧。日報の精度が日々落ちていく。
「終日:開発」のような一行になりがち。月次報告や工数集計に使おうとしても、案件別の内訳が出せない。
一日の最後に残る「重いタスク」になり、後回し・書き忘れが起きる。翌日まとめて書くと精度はさらに下がる。
原因はひとつ。「あとで、思い出して書く」から。
アプローチ
作業する → 記憶をたどる → 日報を書く
記録の品質が「記憶力」と「終業時の余力」に依存する。
次の作業を宣言する → 作業する(記録は済んでいる)
15分区切りごとに「これからやること」を選ぶだけ。記憶に頼らずに済む。
日報は「書くもの」から「勝手に貯まるもの」へ。
全体像
朝いちばんに起動して「業務開始」を押した瞬間から記録が始まる。ショートカットは初回起動時にデスクトップへ自動で用意され、消えても起動のたびに作り直される。
入力ウィンドウが15分区切りごとに現れ、次の作業を宣言。日報メニュー(常駐の小窓)からは編集・MTG予約がいつでもできる。
業務終了は任意のタイミングでOK。一日の記録全体が表で表示され、最終確認・修正をして「締め」ボタンでCSVを保存。キャンセルすれば通常運転に戻る。
15分粒度・案件別のCSVが日々貯まっているので、月次報告書への転記は集計するだけ。
画面① 入力ウィンドウ
15分区切りごとに、これだけが出てくる。
画面② 日報メニュー
× で閉じてもタスクトレイに常駐。右クリックでいつでも再表示。
「休憩」を押すと出る窓。戻って押した時点までが記録される。
画面③ 一覧編集
「編集」で開く一日の記録表。業務終了時の確認画面も同じもの。
画面④ MTG予約
15分ごとにウィンドウが出る仕組みの最大の弱点は「会議中に出てくること」。そこで、会議は先に枠を予約しておく方式にしました。
データ
1日1ファイル・1行=15分枠。UTF-8(BOM付き)なので Excel でそのまま開けます。
日報ログ\日報ログ_2026-07-31.csv| 日付 | 時刻 | 案件 | 作業内容 |
|---|---|---|---|
| 2026/07/31 | 9:00 | 案件A | API設計レビュー |
| 2026/07/31 | 9:15 | 案件A | API設計レビュー |
| 2026/07/31 | 9:30 | 案件A | PRJ-12 商品ページ改修 |
| 2026/07/31 | 9:45 | 社内 | 週次定例MTG |
| 2026/07/31 | 12:00 | その他 | 休憩 |
設定
# 見出しの前は全案件で共通表示 社内MTG 資料作成 [案件A] API設計 PRJ-12 商品ページ改修 [案件B] 運用保守
同じ2ファイルを画面から編集する「選択肢の編集」。
構成
インストールも設定画面もありません。このフォルダを丸ごと渡せば、そのまま動きます。
技術構成
まとめ
日報は、書くものから「貯まるもの」へ。
利用マニュアル(Excel) 配布フォルダにも同じものが入っています
※ クリックするとダウンロードになります(GitHub 上の配布物を取得します)。ツール本体は日報入力ツールのページから入手できます。
APPENDIX A / 作り方
私は元エンジニアなので、コードは読めますし、調べれば書けます。ただ、いまは開発が本業ではありません。
そこでClaude Code(対話型のAI開発ツール)と話しながら、書く側ではなく確かめる側に回って作りました。仕様書はつくっていません。
「何に困っているか」「どう動いてほしいか」を日本語で伝える。動作環境の制約を伝える。出てきたコードと画面に目を通し、違和感をそのまま言う。
PowerShellでの実装、既存コードの整理、動作確認の仕組みづくり、マニュアル・このスライドの作成。
何を作るか、どこで妥協するかは、使っている本人にしか決められない。AIは提案はするが、決めてはくれない。
「作ってもらう」のではなく、「相談しながら育てる」。
APPENDIX A / 出発点
仕様書のかわりに送ったのは、次の2通です。ここから始まりました。
日報の作成をAIに任せられないか。15分単位で作業内容を記録・報告する必要がある。
まず15分単位で入力を求めるバッチにする。対応中の案件と作業内容を入力させるウィンドウを出し、前回の入力を保持するチェックをつける。OKを押すとCSVに保存し、一日の入力が末尾に積み上がっていく。最後にExcelへ貼り付ければ日報になる。
APPENDIX A / 進め方
最初は「日報を任せられないか」。すぐに「15分ごとに入力を求める仕組みでいい」と方式を切り替えた。設計書は書かないが、どう解くかは自分で決めている。
コードが書かれ、すぐ試せる。気に入らなければ言い直す。1回で完成させようとしないのがコツ。
設定の読み込み・CSVの書き込み・記録の重複防止などを自動で検証する仕組みを最初に作らせた。直すたびに走らせるので、安心して手を入れられる。
「なぜこの形にしたか」をAIがドキュメントに書き足していく。次に触るとき、同じ検討を繰り返さずに済む。
APPENDIX A / 実例
| 伝えたこと | 起きたこと |
|---|---|
| 「休憩ボタンを配置して」 | ボタンを追加 → 使ってみて「長さは戻ってから決めたい」と伝え、その場で方式ごと作り直し |
| 「機能ごとにIDを振って、同じ挙動にして」 | 入力画面・メニュー・トレイの3つの入口が同じ定義を呼ぶ構造に。ボタン名のズレも消えた |
| 「1つの実行ファイルにしたい」 | exe化を実施 → 生成した実行ファイルがセキュリティ製品に隔離される → 元の方式へ差し戻し。経緯も記録に残した |
| 「マニュアルをExcelで作って」 | 生成スクリプトを作成。画面の写真も自動で撮るので、UIを変えたら撮り直すだけ |
APPENDIX B / 評価
実際に手を動かした側から見て、この開発が最後まで崩れなかった理由は、次の6点にあります。
15分単位・案件×作業内容という粒度は、「月次報告書へ転記する」という出口から決まっている。作りながら仕様が揺れなかった最大の理由。
一度に全部を伝えず、1機能ずつ。手戻りが小さく、毎回「動くもの」が残った。大きく作ってから直すより速い。
exe化もスタートアップ登録も、使えないと分かった時点で撤退。粘らずに戻し、試した記録だけ残した。
月1回の転記は手作業のまま。毎回繰り返すもの(検証・マニュアル・画面撮影)だけを自動化した。何でも自動化しなかった。
CSVとテキストだけ。専用の形式もデータベースも使っていないので、この道具が無くなっても記録は読める。
使って感じた違和感が、その日のうちに修正になる。ふつうの開発では失われる速さが、そのまま活きた。
APPENDIX B / わかったこと
道具を自分で作る敷居は、もう高くない。
※ このスライドと利用マニュアルも、同じやり方で作成しています。
APPENDIX B / つまずきどころ
AIを使った開発が止まる原因は、だいたい決まっています。今回それらをどう避けていたかを並べます。
| よくあるつまずき | 今回どうしていたか |
|---|---|
| 丸ごと任せて一気に作らせる 期待とズレて、直すより作り直したくなる |
1機能ずつ小分けに頼んだ。毎回「動く状態」で止めるので、戻る場所を見失わない |
| 環境の前提を伝えない 手元で動かないものができあがる |
動作環境の制約を都度伝えた。exe化は使えないと分かった時点で撤退し、記録だけ残した |
| 「できました」を検収せずに信じる 動かない・要件を満たさないものが残る |
自分で動かし、コードも読んで違和感を指摘した。直っていない箇所はその場で差し戻した |
| 完璧な仕様を作ろうとする 考えている間に、何も生まれない |
最初の2通のメッセージだけで着手。細部は使いながら決めた |
| 作って終わりにする 半年後、自分でも直せなくなる |
動作確認の仕組み・マニュアル・判断の経緯を残した。次に触るときに同じ検討をしない |
| 実データをそのまま渡す・資料に載せる 気づかないうちに社外へ出る |
資料の画面写真はダミー値に差し替えた。仕組み自体もローカル完結で、外に出ない構成にした |
どれも特別な技術ではない。人に仕事を頼むときの作法と、ほとんど同じ。
APPENDIX C / 他のAIとの比較
コードを書くこと自体は、いまの主要なAIならどれも書けたはずです。
分かれ目は「自分のPCで動かして、結果を見て、直す」——このループを回せるかどうかでした。
| AIの使い方(例) | この使い方だと、どこまでできたか |
|---|---|
| チャットだけで使う ChatGPT / Gemini / Claude(ブラウザ版)/ Grok / Microsoft Copilot | 中核機能は作れたはず。ただし貼り付け → 実行 → エラーを書き戻す作業が、すべて手動になる。コードが読める人ほど、この往復が重く感じる |
| サンドボックス実行つきチャット ChatGPT のデータ分析 / Gemini のコード実行 | 実行がサービス側の環境で完結するため、今回の用途(手元のWindowsのGUI操作・ローカルファイルやExcelの読み書き)には向かない |
| エディタの補完機能 GitHub Copilot(補完)/ Cursor のタブ補完 / Amazon Q Developer | 書く速度は上がる一方、実行して結果を見て直すところまでは含まれない使い方。方式変更や不具合の切り分けは人が行う |
| エージェント型のツール Claude Code(今回はこれ) / Cursor(Agent)/ Cline / Windsurf / GitHub Copilot(エージェントモード)/ Codex CLI / Gemini CLI / Devin | 今回の作業の大半が再現できたはず。境界線は「この形式かどうか」で、その中では大きな差はない |
| 調べる・まとめるツール NotebookLM / Deep Research(ChatGPT・Gemini)/ Microsoft 365 Copilot | 用途が異なり、この仕組みを作る場面では使っていない。着手前の下調べや、できあがった資料の要約・説明・想定問答づくりには使える |
※ 表に挙げたサービス名は、それぞれの「使い方」に当たる代表的な例です。当社が各サービスを実際に検証して比較したものではなく、今回 Claude Code で行った作業を基準に、使い方の違いを整理したものです(2026年8月時点の理解にもとづきます)。各サービスの現在の機能は提供元の公開情報をご確認ください。
※ 記載の各社名・製品名は各社の商標または登録商標です。当社は各社と提携・監修等の関係にありません。
APPENDIX C / 境界線
今回、Claude Code が人の手を借りずに行った作業
「実行ファイル形式は使えない」「自動起動は使えない」——動作環境の制約は、伝えて初めて設計に反映される。休憩の仕様を3回変えたのも、使ってみた本人の判断だった。
道具の差は「実行できるか」。
中身の差は、やはり人が決める。
APPENDIX D / 自己評価
「使いこなし率◯%」を測る客観的な物差しは、いまのところ存在しません。
代わりに、AIとの付き合い方を5つの段階に分けて、今回どこまで来たかを振り返ります。
分からないことを質問する。調べものの相手として使う。
文章やコードを作らせる。出てきたものは自分で確かめ、自分で動かす。
実行と検証まで任せる。こちらは「どう動いてほしいか」と「うまくいっていない点」を伝える役に回る。
繰り返す作業を自動化し、決めた理由を記録に残す。動作確認・マニュアル生成・画面撮影まで仕組みに組み込んだ。
自分だけの道具で終わらせず、他の人が使える形にする。この資料と利用マニュアルが、その最初の一歩。
APPENDIX D / 到達点
「AIをうまく使えているか」は、次の6つで測れると思います。特別なことではなく、どれも人に仕事を頼むときと同じです。
問うべきは「何%使えているか」ではなく、
「どこまで任せて、どこで自分が判断するか」。