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GX Concept

AIと電力 ──
使う側から考える。

構想段階の検討テーマ

※ 本ページは検討中のテーマをまとめたものであり、現在提供中のサービスを紹介するものではありません。掲載している数値は外部の公開資料からの引用で、当社が算定・検証したものではありません。検討の経緯は今後の展望に日付つきで記録しています。

このテーマについて

当社は生成AIを要件定義・設計の実務に取り入れています。同時に、GX(グリーントランスフォーメーション)を次の事業の軸の候補として検討しています。この二つを並べると、避けて通れない問いが立ち上がります。自分がいちばん頼っている道具は、その足元でどれだけの電力を使っているのか。

排出を減らす仕組みを考えながら、自分の使う道具の負荷には触れない──それでは筋が通りません。そこで、使う側(AIがどれだけ電力を使うのか)と、支える側(その電気はそもそも足りているのか)の両方を、公開資料で確かめました。都市の暑さのように生活圏まで降りてくる論点も、同じ場所に置いています。

調べるほどに分かってきたのは、同じ資料から正反対の結論が作れてしまう、ということでした。だからこのページは、数字を並べるだけの場所ではありません。どちらの極端にも乗らずに判断するための物差しを探す場所でもあります。都合の悪い側も含めて、いま何が言えて何が言えないのかを書き残しておく。結論は出ていません。

まず、数字を確かめた

国際エネルギー機関(IEA)が2025年4月に公表した特別報告書『Energy and AI』が、現時点でもっとも参照しやすい公開資料でした。同報告書の見通し(ベースケース)は次のように整理されています。

倍増という数字は重い。一方で、2030年時点でも世界の電力消費に占める割合は3%弱にとどまる、というのも同じ報告書の指摘です。「AIが電力を食い尽くす」という語り方も、「全体から見れば誤差だ」という語り方も、どちらも同じ資料から切り出せてしまう。

供給側はどうなっているのか ── 足りないのは総量ではない

需要の話ばかりを追っていたので、供給の側も確かめました。結論から言えば、公開資料を並べる限り、世界全体の発電量としては足りる見通しで語られています。ただし「地球全体をひとつの系統とみなせば」という条件つきです。電気は在庫が持てず、送れる距離にも限りがあるため、需給はエリアごと・時間帯ごとにしか成立しません。世界の総発電量が総需要を上回っていることと、真夏の夕方に特定の地域で電気が足りることは、別の問題です。

ここ数年、世界の電力需要は伸び続けていますが、供給はこれに追いついてきています。Emberの集計では、2025年の世界の電力需要は2.8%(849TWh)の伸びで、2024年の4.3%を下回り、過去10年の平均(2.7%、2015〜2024年)並みでした。2021年から2022年にかけてのエネルギー危機も、発電設備の不足ではなく燃料の価格と調達の問題として語られてきました。

2025年には節目がありました。Emberが2026年4月に公表した『Global Electricity Review 2026』によれば、2025年の太陽光の発電量は過去最大の636TWh(30%)増え、これだけで世界の電力需要の伸びの75%を満たしました。風力と合わせると841TWhで、需要の伸びの99%にあたります。再生可能エネルギーの発電シェアは33.8%と、初めて3分の1を超えて石炭を上回りました(同報告書は「近代では初めて」と書いています)。化石燃料由来の発電量は38TWh、率にして0.2%減り、横ばいに転じています。増える需要を、増える再エネがちょうど吸収した年、という整理です。ただし同じ2025年について、IEA『Electricity 2026』は再エネの発電量が石炭に「ほぼ並んだ」と書いており、上回ったとまでは述べていません。同じ年の同じ事象でも、機関によって言い方が違う。

この先はどうか。IEAが2026年2月に公表した『Electricity 2026』は、世界の電力需要が2026年から2030年にかけて年平均3.6%で伸びると見込んでいます。牽引するのはデータセンターだけではなく、産業・EV・冷房です。供給側については、2030年までの需要の伸びは再エネ・天然ガス・原子力で賄われる見通しとされ、低排出の電源(再エネと原子力)が世界の発電に占める割合は2025年の42%から2030年には50%へ上がるとされています。発電量そのものは、足りる見込みで語られている。

では何が制約になるのか。同報告書が繰り返し指摘するのは系統(グリッド)です。世界で2,500GWを超えるプロジェクト──再エネや蓄電池だけでなく、データセンターのような大口需要も含む──が接続待ちで滞留しているとされます。同報告書は、2030年までの需要を賄うには系統投資を現在の年約4,000億ドルから5割程度増やす必要があるとし、あわせて、系統増強技術と規制面の調整によって、接続待ちのうち1,200〜1,600GW分を接続できるだけの容量を生み出せるとも試算しています。発電できるのに繋げない、使いたいのに繋げない、という詰まり方です。

この滞留はデータセンターにも及んでいます。同報告書によれば、接続待ちのうち少なくとも150GWがデータセンターの案件で、世界のデータセンター建設の5分の1が系統の混雑によって遅延するリスクにあるとされます。時間軸の差も効いています。同報告書によれば、新しい系統は計画・許認可・完成までに5〜15年かかる一方、データセンターの建設は1〜3年、太陽光や風力は1〜5年とされます。作る速さがまるで違うものを、同じ場所で噛み合わせなければならない。

さらに、足りる・足りないは発電量だけでは測れません。IEA『Electricity 2026』は、2025年4月28日にイベリア半島で起きた大規模停電を、2003年のイタリアの停電以来、欧州で最大のものとしています。同報告書によれば、ENTSO-Eの初期報告とスペインの系統運用者・当局の分析では、これは単一の原因によるものではなく、電圧の大きな変動、その時点での無効電力の吸収余力の不足、強い電力動揺、そして急速な解列がさらなる電圧上昇を招いたことが重なって起きたとされ、過電圧が発電の連鎖的な脱落を引き起こして系統は数秒で崩壊したとされます。量が足りていても、系統が持ちこたえられなければ停電は起こる。一方で復旧は、フランスやモロッコとの連系線と自力起動できる電源によって12〜16時間で完了したとされ、地域をつないでおくことの価値も同時に示されました。

ここまで調べて、自分の書き方をひとつ直したくなりました。「2030年でもデータセンターは世界の電力の3%弱」というのは総量の話です。ところが系統は総量で運用されていない。同じ数字が、立地の話にした瞬間に誤差ではなくなる。前の節で「全体から見れば誤差だ」という語り方も切り出せてしまうと書きましたが、供給側を並べると、その語り方が成立しない場面のほうが実務では先に来ると分かりました。

日本の事情 ── 効いてくるのは総量より立地

IEA『Energy and AI』では、日本のデータセンターの電力消費は2024年から2030年にかけて約15TWh(80%)増えると見込まれています。同報告書は一人あたりの消費も示しており、日本は2030年で約270kWhと、欧州(165kWh)や中国(200kWh)を上回る水準とされています。米国については、IEA『Electricity 2026』が2030年までの電力需要の増加の約半分をデータセンターの拡大が牽引すると見込んでいます。世界全体で見れば、IEA『Electricity 2026』によれば同じ期間の電力需要の伸びに占めるデータセンター分は1割未満にとどまります。ただし『Electricity 2026』は、絶対量の伸びが小さく見えても、データセンターは電気自動車と違って特定の立地に集中する傾向があるため、系統への統合はかえって難しくなりうると指摘しています。

供給側の制約は、国内ではより具体的な形で見えています。電力広域的運営推進機関が2026年3月に公表した需給見通しは、過去10年で最も厳しい気象条件並みを想定した需要(厳気象H1需要)に対して、予備率3%以上(供給力103%以上)を確保できるかを評価基準としています。2026年度夏季の東京エリアの8月は、最小予備率時で2.4%と、この基準を下回りました。ただし同資料は、一般送配電事業者によるkW公募(最大約120万kW、エリア予備率2.0%程度)を見込むことで3%を上回る見通し、とも記しています。最大需要時で見れば6.0%です。同じ月の同じエリアでも、どの断面を取り、どこまでを供給力に数えるかで数字は動く。この見通しはその後も更新されており、本ページの記述は当該時点の公表値です(現在の需給状況を示すものではありません)。都市部では新規の受電容量の確保と系統への接続が論点になりつつあります。数値を判断に使う際は各機関の最新の公表資料を確認する前提ですが、「どこに建てるか」が電力の制約から決まりつつあるという論点が前に出てきているようには見えます。

効率の側も動いています。IEA『Energy and AI』のベースケースでは、施設全体の消費電力をIT機器の消費電力で割った指標(PUE)の世界平均が1.41から1.29へ改善し、約90TWhの電力需要が節約されると見込まれています。こうした指標も、まず測らなければ改善を語れません。排出量算定の前工程構想で扱っているのと同じ構造です。対象が会社の排出でも施設の電力効率でも、最初に立ちはだかるのは「そのデータは、どこに、どんな形であるのか」という問いになる。

その熱は、街を暑くしているのか ── 東京の暑さとの距離

夏になるたび、東京の暑さは年々厳しくなっているという実感があります。ここまで電力の話を追ってきたので、素直な続きとして問いが立ちました。AIの普及は、この暑さを加速させているのか。調べてみると、時間軸と空間のスケールを分けないと答えられない問いでした。

まず、すでに起きた気温上昇について。気温の上昇は累積の排出で決まる一方、データセンターの排出がこの規模で語られるようになったのはここ十数年です。IEA『Energy and AI』では、データセンターの電力消費に伴う間接的なCO2排出は2024年時点で約1.8億トン、燃焼由来のCO2(同年で約350億トン)のおよそ0.5%とされ、ベースケースで2030年に1%程度、需要の伸びが速い Lift-Off Case で1.4%程度と見込まれています。なおこの1.8億トンはデータセンターの全ワークロードの合計で、AIはその部分集合です。同報告書は、データセンターの電力需要のうちAIが占める割合を切り分けるのは難しいとしたうえで、代理指標となる加速サーバー(accelerated servers)が2024年のデータセンター全体の電力需要の15%を占めると示しています。伸びの速さは前述のとおりですが、これまでに積み上がった気温上昇を説明できる量ではありません。

そのうえ東京の暑さには、地球規模の温暖化とは別の要因が重なっています。気象庁の資料(1929〜2025年の観測に基づく100年あたりの変化率)では、東京の年平均気温の上昇は約3.5℃、都市化の影響が比較的小さい国内15地点の平均は約1.8℃/100年とされ、同資料はこの差を、おおよその見積もりとして都市化による影響とみることができるとしています。これがヒートアイランドです。環境省の資料は、その要因を地表面被覆の人工化・都市形態の高密度化・人工排熱の増加の三つに整理しています。同資料が示す人工排熱の内訳の推移(2000年代半ばまで)では、かつて大きなウェイトを占めていた工場からの排熱が減少を続ける一方、建物からの排熱は増加を続けており、東京都区部では非住居系の建物による増加が大きいとされます。ただし同資料の建物の区分は用途別の集計であり、データセンターを切り出したものではありません。この記述からデータセンターの寄与を読み取ることはできない。東京の暑さは、温暖化と都市化の二階建てになっている。

では、データセンターの排熱そのものはどうか。ここが今回いちばん判断に迷ったところで、いまも定まっていません。

なお、気温の単純な年次比較は、地球規模の温暖化・都市化・施設の排熱を分離した推計ではありません。数字の出どころと、何と何を比べたものかを確かめずに使うと、因果を取り違えます。

現時点の整理はこうです。「この夏の東京が暑いのはAIのせいだ」とは、公開資料からは言えない。一方で「データセンターは特定の立地に集中するため、系統への統合が制約になる」というのは、前の節で見たとおり成立している論点です。同じテーマの中に、言えることと言えないことが混ざっている。むしろ実務で先に効くのは、逆向きの因果かもしれません。猛暑そのものが冷房需要を押し上げ、電力のピークを厳しくする。暑さがAIの制約になる、という向きです。数字もその向きを支持しています。IEA『Energy and AI』によれば、2014年から2024年の世界の電力消費の増分のうち、データセンターは約250TWh。同じ期間に冷房(space cooling)の消費は約700TWh増えており、桁がひとつ違うわけではないにせよ、増分としては冷房のほうが大きい。Ember『Global Electricity Review 2026』は、2024年に世界の電力需要の伸びが構造的なトレンドを大きく上回ったのは、2023年に比べて気温が異常に高かったためだと分析しています。IEA『Electricity 2026』も、2024年の伸びを押し上げた要因として熱波を挙げ、2030年までの需要の伸びを牽引するものの一つに冷房を数え、冷房需要は年間の消費だけでなくピーク負荷も押し上げるとしています。暑さは、すでに電力需要を動かす要因として観測されている。

もう一方の側面 ── 減らす側は「条件付き」

AIは電力を使う側であると同時に、排出を減らす道具にもなりうる、という議論があります。IEA『Energy and AI』は、既存のAI応用が各分野に広く普及した場合(Widespread Adoption Case)、2035年に14億トンのCO2削減につながりうると試算しています。同報告書によれば、これはデータセンターの排出のベースケースの約5倍、Lift-Off Case の3倍にあたります。削減側の桁のほうが大きい。ただし同報告書は、この14億トンも2035年のエネルギー部門の総排出のおよそ4%にとどまる、とも述べています。

ただし同じ報告書は、そうした普及を確実にする勢いは現時点では存在せず、条件が整わなければ効果は限定的にとどまりうる、とも述べています。増える分はインフラ投資として着実に積み上がるのに対し、減る分は「普及すれば」という仮定の上にある。この非対称性は、都合よく読み飛ばしたくないところです。

個人のデコ活の実践で得た感覚が、ここでも効きます。エコっぽく見えることと、実際に排出が減ることは別物だ、という線引きです。AIを使って何かが速くなったとして、それは移動や手戻りを実際に置き換えたのか、それとも単に処理の量が増えただけなのか。置き換え元を問わない削減の話は、個人の暮らしでも事業でも成立しません。

二つの極端の、どちらにも乗らない

このテーマには、両極の語り方があります。「AIが電力を食い尽くす」と「全体から見れば誤差だ」。すでに触れたとおり同じ資料から両方を切り出せてしまうのですが、調べてみて分かったのは、この二つが同じ作り方をしている、ということでした。条件つきの数字から条件を外す、という作り方です。前者は特定の地域・時間帯の逼迫を世界全体の不足に広げ、後者は総量に占める割合を持ってきて立地の制約を消す。出典が同じでも、どちらの結論も作れてしまう。

どちらに乗るかを選ぶより、制約の正体を見分けるほうが実務的だと考えています。制約が「総量」にあるなら、使う量を減らすことが効きます。制約が「場所と時間」にあるなら、総量の削減だけでは接続待ちの列は進みませんし、ピーク時の逼迫も直接には緩みません。調べた範囲の公開資料からは、いまの制約は後者に寄っているように読めます(これは当社の読み取りであり、各資料がそう断定しているわけではありません)。だとすれば有効な手は「使うのをやめる」ではなく、「いつ・どこで使うかを動かせるようにする」ほうにありそうです。症状ではなく制約条件を先に特定する──これは要件定義で最初にやることと同じ形をしています。

では、個人や小さな会社は何を物差しにすればいいのか。前の節で触れた「置き換え元を問う」という線引きが、そのまま使えると考えています。使用量そのものではなく置き換え元を問う物差しなら、電力の見通しが上下しても持ち替えずに済みます。「使う/使わない」の二択は、そもそも問いの立て方が粗い。

両極のどちらでもない言い方をひとつ選ぶなら、いま起きているのは「電気が枯渇する心配」ではなく「間に合うかどうかの心配」なのだと思います。前の節で見たとおり、IEA『Electricity 2026』は2030年までの需要を賄うには系統投資を現在の年約4,000億ドルから5割程度増やす必要があるとしています。そのとおりだとすれば、現状の延長では足りないことになる。けれども、足りなくなると決まったわけでもない(同報告書は、系統増強技術と規制面の調整によって、接続待ちのうち1,200〜1,600GW分を接続できるだけの容量を生み出せるとも試算しています)。この二つを同時に持っておくのが、いまのところ一番正直な持ち方だと考えています。

一人法人の実務に引き寄せると

自社の仕訳データで排出量を概算してみたときに見えてきたのは、当社の排出はほぼすべてScope3──買っているもの由来──になりそうだ、ということでした(同プロトタイプの原単位はサンプル値であり、正式な算定ではなく構成の見当をつけるための概算です)。AIやクラウドの利用も例外ではありません。電力を使っているのは自社の設備ではなく、事業者側のデータセンターです。

すると、仕訳ベースの概算では「支払額 × 原単位」という形でしか乗ってきません。実際に使った計算資源や、その電源構成とは結びつかない。金額が増えれば排出も増えたことになり、効率が改善しても数字は動かない。粗い概算の割り切りとしては妥当でも、AI利用が費用の中で存在感を増していくなら、この扱いのままでいいのかは考えておきたい論点です。前工程構想の宿題がひとつ増えた、という受け止めをしています。

検討中の論点 ── 決めていないことも書いておく

これから取り組むこと

一次情報を読み続けること、自社の概算にクラウド・AI利用の費目がどう乗るかを実際に確かめること、そして分かったことも分からなかったことも今後の展望に日付つきで書き残すこと。この三つから始めます。数字が動くテーマなので、本ページの記述も更新していきます。

参考資料

本ページの記述の根拠としている公開資料です(いずれも外部サイト)。数値の引用はいずれも各資料の見通し・試算であり、前提となるシナリオによって変わります。本ページは各機関・団体および引用元の著者・研究者と提携し、またはその監修・確認を受けたものではありません。引用は公開資料の紹介であり、著者の見解を当社が代弁・支持するものではありません。記載の名称は各権利者に帰属します。判断に用いる際は必ず一次情報をご確認ください。

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公開日:2026年7月29日 / 最終更新:2026年8月14日(判断の物差しについての節を追加し、導入を修正。内容は検討の進展にあわせて更新します)